はこにくみ

細く長く続けられるブログにしたいと思います。

映画見ました!重力ピエロ

 

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楽しそうにしていれば地球の重力なんて消してしまえる。

私たちいつか宇宙に飛んでっちゃうかもね。

サーカスを見ながらお母さんは言った。

 

仙台の街で起こる連続放火事件の背景にあるストーリーがこの映画の主題。放火現場の近くには必ず奇妙なグラフィティアートが描かれていた。このグラフィティアートをアルバイトで消す仕事をしているという弟の春と、兄の泉水は、放火犯を捕まえようと作戦を立てる。

 

しかし実はこの2人は辛い過去の記憶を抱えたままの家族の一員であった。弟の春は、母親が見ず知らずの男に強姦をされたあとに生まれてきたのである。しかし2人が成長するにつれ、絵画コンクールなどで才能を発揮する春のことを、家族全員が複雑な心境ながらも喜ぶといったシーンが増えて行くのであった。

 

真相を追ううちに見えて来たもの、それはかつて強姦をした男が事件を起こした場所と同一のエリアで春が放火しているという事実であった。この事実に気づいた泉水は、春の父親に近づき春と本当に血が繋がっているかどうか、遺伝子検査をする。結果、やはり彼らは遺伝子学上、親子関係であることが判明した。

 

謎を解き明かしたとき、その先に見えてくるものとは。泉水と春は、それぞれ別の計画を立てる。それは、春の父親を殺害する殺人の計画だった。結局、春の計画の方が先に遂行される。彼は父親を何度もバットで殴り、その上で彼の家に放火し積年の恨みを晴らしたのだった。

 

「春が二階から落ちてきた。」二階の窓から、外にいる兄に向かって飛び降りてくるシーンでこの映画は締めくくられる。弟は以前と同様、兄を慕い、仲良くじゃれ合っている。かつて母親が、幸せなフリをしていればいい、そうすればいつか実現する、ということを話したことがあった。しかし、彼らは過去に目を向け、宇宙まで飛んでっちゃうことをあえて選ばずに、重力のあるこの世界を選んだ。殺人を正当化してしまうわけには行かないが、強姦事件や放火犯、それらを覆ってしまう家族愛の物語はとても複雑で、ある意味美しいと感じてしまった。普通の、幸せな、楽しい家族のフリをしていていて、でも本当は事情を抱えている人たちって、案外たくさんいるのだと思う。