読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

はこにくみ

細く長く続けられるブログにしたいと思います。

映画見ました!ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2012)

感想のこと

父の最後のメッセージを探して、少年の旅は始まった。

f:id:haco2kumi:20161121153239j:plain

アメリカの9.11のテロ事件を題材にした映画。父を亡くした少年が、その父が遺した謎の「鍵」が何の鍵なのかということを探し、ニューヨークの町中をさまよい歩くというストーリー。大切な家族を突然失ってしまった人たちの、その後の淡々とした生活を彷彿させる、静かなエンディングに疑問も多く残った。特に、タイトル「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」の意味について映画の中では理解すべきポイントがつながる気配がなく、どこかで見落としてしまったのではないかと思い返してみるも分からずじまいだった。

 

まもなく崩壊してしまうビルから留守電に電話をし続けた父親、その電話に怖くて応答することが出来なかったオスカーはアスペルガー症候群の疑いがあると診断されていた。父の遺品の中から封筒に入った鍵を見つけ出した。その封筒には「black」と書かれていたことより、ニューヨーク5区に在住する472名のblackという人物たちを訪ね歩くことを決意する。鍵にあう鍵穴は存在するのか。そこには何か父親からのメッセージが残されているのではないか。そう期待して、毎週末探しまわる一方、オスカーは母親とのコミュニケーションがうまくとれなくなって行く。

 

祖母の家に住む「間借り人」は失語症の老人で、実は彼の祖父であった。オスカーは間借り人の助けを借りて、鍵穴探しの旅を続ける。老人はオスカーに電車に乗る勇気を与え、心を開かせる機会を与えた。自分自身が言葉を離せなくなった理由については、戦争体験によるものと簡潔に説明したものの、彼自身の体験については映画で詳しく触れられることは無かった。

 

物語の終盤、オスカーは鍵の本当の持ち主のblack氏を探し当てる。実はblack氏自身も、突然父親を失ったという過去を持つ人だった。父親が遺した貸金庫の鍵をずっと探していた、その鍵は蒼い花瓶の中に入っているというのが亡き父のメッセージだった。black氏は、ガレージセールで父親の遺品を全て処分しており、蒼い花瓶はオスカーの父親に既に渡ってしまっていて連絡も取りようが無かったという。

 

やるせない思いを抱えて家に戻ったオスカーは、全てが徒労に終わったと自暴自棄になり、狂ったように泣き叫んだ。それを見かねた母親が「私があなたから目を離すと思う?」と語りかけた。久しぶりに言葉を交わし、実は母親もオスカーの部屋から見つけた手がかりをもとに、密かにニューヨーク中のblack宅を訪ね歩いていた事実を知ったのだった。

 

パパの声が聞きたい。愛しているという声を聞きたい。喪失の悲しみを母親ときちんと言葉にして共有できたのはこれが初めてだったのかもしれない。発達障害を持つ少年が、母親に見守られながら冒険を果たした。彼は喪失の悲しさを乗り越えたとき、相手の気持ちを推しはかって発言する言葉を選んだり、相手を傷つけないように接しようとする努力をするようになっていた。タイトル「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」は、母親のことではないかという意見もあるようだけど、それでは安易なのではないかとも思う。訪問をしたブラックさんたちに感謝の手紙を書き、また祖父にも帰ってほしいと連絡をしたオスカーは、父が幼い頃遊んでいたというセントラルパークのブランコから、「おめでとう」という父からのメモを発見した。父のことを失った過去は、これからもずっとついてくる。そういう意味では、「喪失感」こそが、このタイトルの主語なのかもしれない。